自律訓練法による心のセルフケア入門

はじめに

Introduction

自律訓練法の初心者からその指導者のプロとなる道順を解説

本サイトでは、自律訓練法の初心者からその指導者になるためのプロ向けまで段階を追って解説しています。

まずは、自律訓練法の基本情報を紹介しています。そのうえで、場所や年齢を問わず短時間で手軽に自律訓練法を行える下口式自律訓練法を紹介しています。

自律訓練法とは

Method

『自律訓練法』はドイツのベルリン大学教授ヨハネス・ハインリッヒ・シュルツ博士(1884~1970)が考案したセルフコントロール法です。

そして、厚生労働省が運営する「生活習慣病予防のための健康情報サイト」で自律訓練法は以下のように紹介されています。

自己暗示の練習によって段階的に全身の緊張を解いていく訓練法。疲労回復やストレス解消などの効果が期待できる。
自己暗示によって体の筋肉の緊張を解きほぐし、中枢神経や脳の機能を調整して本来の健康な状態へ心身を整えることを目的とした訓練法です。

厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット

上記のように、自己暗示によって緊張をほぐし、健康な状態へ心身を調整するための訓練法であることが解説されています。

理解を深めるための補足情報

「自己暗示」という言葉に驚かれる人いらっしゃるかもしれません。ですが、厚生労働省が自律訓練法を紹介するうえで、自己暗示の練習が自律訓練法の基本となることを解説として加えています。自律訓練法には自己暗示が深く関わってきますので、驚かずに読み進め、理解を深めることで自律訓練法を賢く使っていただけることを願っています。

では、これより具体的に、そして身近な例を挙げながら以下に解説していきます。

人間の心は不思議です。
あなたもこんな経験はありませんか?↓

  • Aさんは、普段寝つきが良いのに、会社の会議の前日になると、なぜか眠ろうとすればするほど目がさえてきます。
  • 学生のB君は、どこも悪くはないけれど、テストの前になると急にお腹が痛くなり、テストが終わってしばらくするとウソのように痛みがなくなってしまいます。 
  • また、Cさんは友達同士で話しているときは何ともないけれど、上司の前にいくと顔もこわばり上手く話せなくなります。
  • D子さんは人前でふだんは楽に話せるのに、大事な会議の時に限って顔が赤くなり、赤くならないでおこうと思えば思うほど赤くなるのです。
  • 心が緊張すると肝心なときに限って、期待することとは逆の現象が起きることがあります。

シュルツ博士はこのような“努力逆転現象”の起こらない方法はないものかと1905年より研究に取り掛かりました。

まず博士は心が統一されている人間の身体の状態を調べたのですが、その結果両手、両足の力が抜けている、両手両足が温かくなっている。額が涼しいなど、共通している身体の状態であることを発見しました。日本では古くから言われている理想的な心身の状態である「頭寒足熱」の状態です。
このことから、精神が統一されている人の身体と同じ状態に、自己暗示で自分の身体をくつろがせていくことで、仕事や学習に、またスポーツに集中できる状態になれるのではないかと、シュルツ博士は考えたのです。

その結果、ついに1932年にこれを「オートゲネー・トレーニング法」(AT法)として発表したのです。
企業での社員研修、病院での患者さんの治療、教育界で学習指導に活用したところ大きな効果がありました。

その後、AT法を実施すると「心がゆったりと落ち着いてくる。気分が爽快になる。エネルギーが出てきてやる気が湧き出てくる」などさまざまな心理効果があらわれてくることがわかってきました。

日本には、1951年に京都大学の佐藤幸治教授が初めて紹介しました。
そして、1959年に当時九州大学の成瀬悟策博士(1924~2019)によって『自律訓練法』という名称で学会発表されました。

医学的には九州大学の池見酉次郎博士(1915~1999)が1961年に日本で始めて心療内科を創設し、内科疾患を中心に、心と体の相関関係に注目した診療方法を体系化、実用化に尽力されました。自律訓練法の基礎的・臨床的特長や効果が確認されました。

日本自律訓練学会は,1978年設立され,初代理事長は池見酉次郎先生です。1991年に2代目理事長は筑波大学教授佐々木雄二先生、2009年に3代目理事長は久保千春九州大学総長です。

自律訓練法は、本来はコントロールできない自律神経系を言葉(言語公式)とイメージ(自己暗示)によって自己コントロールし、自律神経系のバランスを回復させるリラクゼーション法です。
第六段階までありますが、この本で紹介する第二段階まででも十分効果があります。「言語公式」とイメージがポイントになります。

  • 第0段階(背景公式)「気持ちが落ち着いている」:安静感
  • 第一段階「両手両足が重たい、ゆったりしている」:重量感
  • 第二段階「両手両足が温かい」:温感

自律訓練法は、まるで禅の境地のような状態に比較的簡単になれる方法なので、インスタント禅とも言われています。実際、心療内科、精神科などで用いられ、大変効果があります。

自律訓練法のやり方

How to

自律訓練法は0~6段階で構成されています。

公式は7つですが、一般的に行われているのは、実際第二段階までですの練習を行い、大部分の人が第二段階まで習得した自律訓練法を行って良い効果をあげています。(第2段階まででプログラムした解説書を用意しています。)

  • 第0段階(背景公式)「気持が落ち着いている」 安静感
  • 第一段階 「両手両足が重たい、ゆったりしている」 重量感
  • 第二段階 「両手両足が温かい」 温感
  • 第三段階 「心臓が静かに打っている」 
  • 第四段階 「呼吸が楽だ」
  • 第五段階 「胃のあたりが温かい」
  • 第六段階 「額が涼しい」

自律訓練法の注意点(禁忌)

自律訓練法によって練習者の健康に有害な反応や機能的変化などを起こす恐れのある場合

  1. 第三段階:初発間もない心筋梗塞などの虚血性疾患
  2. 第四段階:気管支喘息などの呼吸器疾患
  3. 第五段階:消化器疾患のうち出血の恐れのある場合
  4. 第六段階:脳出血後遺症、テンカンなどは一部を省略

自律訓練法の心得

自律訓練法の練習をするにあたっての環境条件の解説です。

場所

はじめは、静かで落ちつける場所で練習し、慣れてきたら会社や電車の中でも簡単にできるようになります。

姿勢

イスに深く腰をかけて座り、両足はひざより前に出し、ひざとひざ間にはにぎりこぶし一つか二つ分ぐらいにあけます。両手はひざの上にのせます。または、ふとんの上にあお向けに寝て、手は両わきに伸ばします。

練習回数と時間

一日に三回くらいの練習が適当です。
起床時や就寝時の練習はたいへん効果があります。

忙しい人は就寝時だけでもやるといいと思います。また仕事や学習を始める前に行うと、集中力が倍増されます。

毎日一回だけでもいいですから、続けることが大切であり、続けていると、十日間位で一つの段階がマスターできます。

終了覚醒

「三つ数えて醒めたと思うと、気持ちよく、くつろぎから醒める」と自己暗示し、「一つ、二つ、三つ、醒めた!」と言い聞かせて、目を開け、ぐんと伸びを二回します。これを省略するとめまいなどしてフラフラすることがあるかもしれませんので、必ず行いましょう。練習の途中で電話や来客のために中断する時には「醒めた!」と自己暗示をして伸びを二回すればいいのです。ただし、寝る時はそのまま眠ってしまってよいのです。この練習を繰り返しているうちに、きっと熟睡が得られるようになります。

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自律訓練法の効果

Effect

自律訓練法は世界的に下記の効果が認められています。

自律訓練法の効果

  1. 蓄積された疲労を回復することができる。
  2. イライラが消え、穏やかな気持ちになり、心理美容効果も大きく、人間関係もスムーズになる。
  3. 自己統制法が身につき、衝動的な行動が少なくなる。
  4. 仕事や学習に対する集中力がつき、能率が上がる。
  5. 精神的な苦痛が緩和される。
  6. 内省力が形成され、自己向上性が増す。
  7. 目標達成、問題解決のアイディアが出やすくなる。

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